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2024.06.30
ひとえに瓦屋根といっても種類がたくさんあり、どれを選べばよいか迷う場合も多いと思います。
そこで、この記事では初めて瓦屋根の導入を検討している方に向け、瓦屋根全般の知識の中でも特に知っておきたい内容を紹介していきます。
業者に相談する前に、自分でも瓦屋根について基本的な知識を身に付けたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。
瓦屋根は「粘土瓦」と「セメント瓦」の2種類に大別でき、粘土瓦は和瓦や日本瓦と呼ばれる場合も多いです。
ちなみに、愛知県三河の「三州瓦」・島根県・石見地方の「石州瓦」・兵庫県淡路島の「淡路瓦」は日本三大瓦として知名度があります。
瓦の産地によっても、名称や特色(例 : 焼成温度など)が異なる点も覚えておきましょう。
それでは、粘土瓦とセメント瓦について説明していきます。
粘土瓦は製造方法の違いで、主に釉薬(ゆうやく)瓦と無釉(むゆうやく)瓦に分類されます。
釉薬瓦は名称通り、釉薬を塗って焼成した瓦です。
釉薬はガラス質の粉末で、水で溶かした後に塗布することで瓦の表面がコーディングされ、防水性が高まり寿命が伸びます。
陶器を作る際も釉薬を使用するため、粘土瓦は「陶器瓦」と呼ばれる場合も多いです。
無釉瓦は釉薬を使用せずに焼成した瓦で「いぶし瓦」「素焼き瓦」「練込瓦」「窯変(ようへん)瓦」などの種類があります。
いぶし瓦と素焼き瓦は使用される機会が特に多く、いぶし瓦は神社やお寺の屋根材として、素焼き瓦は洋風建築に導入されるケースが多いです。
セメント瓦は、セメントに水を混ぜたものを型に流し込んで成形した後に塗料で仕上げた、高度経済成長期に普及した瓦です。
扱いやすく価格も安価なため、多くの建物で利用されていました。
しかし、近年はガルバリウム鋼板をはじめとした、他の安価で耐久性が高い素材にニーズを奪われ、現在はほとんど製造されていません。
和瓦と洋瓦の大きな違いは外観です。
和瓦は大きな波を打ったような形状が特徴で、比較的落ち着いた色が多いため、重厚で高級感のあるイメージといえます。
逆に洋瓦はオレンジや紺などカラーバリエーションが豊富になり、形状もスタイリッシュなものが多いため、オシャレな雰囲気を演出できます。
和瓦は日本において代表的ともいえる瓦です。屋根材として導入することで建物全体に重厚感が生まれます。
和瓦は「Japan」の頭文字をとりJ形と呼ばれ、緩い曲線のような形状が特徴です。
製造方法としては、先ほど説明した粘土を焼き上げ釉薬をコーティングした釉薬瓦、素焼き瓦といぶし瓦をはじめとした無釉瓦に分類されます。
また後ほど詳しく説明しますが、和瓦はサイズや形状が同じものが多く、交換が容易なのも特徴です。
和瓦が和の趣を表現できるのに対し、洋瓦は個性的でオシャレな雰囲気を演出できます。全体的に和瓦よりも凸凹が大きく、丸みを帯びているのが特徴です。
和瓦と比較して山になっている部分が丸く盛り上がり、先端が細くなっています。
種類 | 特色 |
S字瓦(S形) | ・和瓦より丸みがあり立体的な印象になる
・カラフルで色合いが豊富 ・色の異なる瓦を混ぜ合わせて葺く「混ぜ葺き」が可能 ・瓦1枚の中でグラデーションもつけられる |
平板瓦(F形) | ・シャープですっきりとした印象
・J形(和瓦)やS形より凸凹していないため「太陽光パネル」を設置しやすい ・ブラックのような落ち着いた色合いが豊富(カラフルなS形と対照的) |
洋瓦は主に形状で見分けることができ、「S字瓦」と「平板瓦」の2種類に大別できます。
瓦屋根のメリット・デメリットを「瓦屋根全般」と「種類別」に分けて説明していきます。
■メリット
瓦は耐久性が高く、メンテナンスにあまり手間がかからないのが魅力です。ただし、瓦のズレやひび割れなどのトラブルが起こった際は、補修が必要になります。
瓦の寿命やメンテナンスについては、次章で詳しく解説します。
和瓦は「サイズ・色・形状」が同じ製品が多く、かりに瓦が割れたとしてもすぐに代用品を入手できるため交換しやすいです。
ただし、症状によっては瓦の交換が難しい場合もあります。
ひび割れ程度あればコーキングで対応できますが、割れている瓦があまりにも多い場合は葺き替えが必要になるケースもあるでしょう。
瓦は「断熱・遮音・防音・防水」などの性能に優れています。
特に粘土瓦は断熱性が高く、夏は暑さ対策につながり冬も暖かさを維持できるため、快適な生活を送れるでしょう。
防音性の高さは、特に普段から雨音が気になる方にとって、かなりのメリットになります。
釉薬を塗布すると表面がコーディングされガラス質になるため、防水性が高まり色あせが起こりづらいです。
ただし、必要に応じてメンテナンスが必要になる点は認識しておく必要があります。
瓦は1枚ずつ取り外しができるため、部分補修ができます。
入手が容易で交換しやすいのに加え、修理がしやすいのも魅力です。
■デメリット
瓦は耐久性がありメンテナンス費用がかからない反面、初期費用がかかるのがデメリットです。瓦自体の値段が高く、施工にも専門技術が必要なため、どうしても導入時には費用がかさんでしまいます。
トタンやストレートなど定番の屋根材と比較して、倍近く費用がかかるケースも多いので注意が必要です。
瓦を導入してからメンテナンス・交換に至るまでの、一般的なトータルコストについて、業者に問い合わせることをおすすめします。
瓦屋根は重量があり、地震・強風に弱いといわれています。
ただ施工方法によっても「耐震性・防風性」は左右されるので、一概に弱いとも言い切れません。
実際に、瓦の重さによる建物の倒壊、自然災害による瓦の落下や破損が起こっているのは、ほとんどが20年以上前の工法で作られた瓦屋根です。
現在は軽量化された防災全般に強い「防災瓦」が標準で、瓦同士が強く連結されています。
地震によって瓦が落下したり、強風で飛ばされたりするリスクは、かなり軽減したといえるでしょう。
続いて、粘土瓦とセメント瓦の「種類別」にメリット・デメリットをみていきます。
粘土瓦は耐久性が高く、耐用年数は50~100年といわれています。
定期的に点検は必要になるものの、再塗装などのメンテナンスは全般的に必要としないケースが多いです。
耐火性・防水性・防音性の高さに加え、汚れづらいという特徴もあるため、建物の外観や快適な住環境を維持できる点もメリットといえます。
メリット | デメリット |
・耐久性が高い
・建物の外観、快適な生活環境を維持しやすい ・結露が起きづらい |
・耐震性が低い
・屋根材の中でも初期費用が高め |
また、瓦と屋根の下地の間にある空気層の影響で湿気がこもりづらく、冬に結露が起きづらい点も魅力です。
総じて「雨が多く、夏は涼しく冬は暖かい」という、日本の気候に適しているといえます。
主なデメリットは、素材の重さと初期費用の高さです。
日本は地震大国のため、特に震災直後からは建物の耐震性を重視してきました。そのため瓦の重さで屋根に少なからず負担がかかってしまう点は、デメリットとして捉えられるケースが多いです。
また粘土瓦を屋根材として導入する場合は、他の屋根材と比較して初期費用が1.5~2倍程度かかってしまいます。
ただ、粘土瓦は耐久性が高くメンテナンスが少なくて済むので、長期的に見れば費用はそこまでかからない可能性はあります。
心配であれば、業者に頼みトータルの費用をシミレーションしてもらえば確実です。
釉薬瓦は表面が釉薬でコーディングさせることでガラス質になり、防水性が増すことで劣化しづらくなることは既に説明しました。
その他のメリットとして、釉薬は種類や配合が豊富にあり、色合いやツヤを多彩に表現できる魅力もあります。
様々な外観の屋根材として使用できるため、使い勝手のよさを実感できるでしょう。
デメリットは、釉薬を瓦にコーディングする際の材料費と手間が比較的かかるため、屋根材1枚あたりの価格が高くなりやすい点です。
無釉瓦の中でよく使用される「いぶし瓦」は、焼いた後に窯の中でいぶして仕上げます。いぶすことで表面に炭素膜ができ、防水性が増します。
ただし経年劣化の影響で炭素膜が剥がれくると、防水性が低下し色落ちしてくるので、メンテナンスが必要になります。味のある黒から銀色になるため、趣を表現したい和風住宅などにおすすめです。
「素焼き瓦」は、粘土を直接焼くため素材自体の色味を活かせます。ちなみに洋瓦の大半が、この素焼き瓦です。
無釉瓦のデメリットは表面が釉薬で施されていないため、釉薬瓦より耐久性に劣り、表現できるデザインの幅も狭まってしまう点が挙げられます。
セメント瓦の耐用年数は30~40年と比較的長く、価格も安価な部類です。施工も容易で施工費が抑えやすく、対応業者も多いので、コスパがよい素材といえます。
形状が豊富にあり、デザインに合わせて瓦を選べるのもメリットの1つです。
メリット | デメリット |
・耐用年数が比較的長い
・施工しやすい(施工費を抑えられる) ・価格が安い ・表現できるデザインの幅が広い |
・割れ・ひび割れが起こりやすい
・塗装メンテナンスが必要 ・色あせた箇所から苔が生えやすい |
デメリットは、セメントは硬い上にしならないため、他の屋根材に比べ衝撃に弱く割れやすい点です。
割れ・ひび割れが起こった場合には、メンテナンスや瓦の交換が必要になります。放置すると内部にまで劣化が進行するので、早めに対照することが大切です。
同様に、他のセメント瓦や建材に割れ・ひび割れの影響が及んでいないかどうかも、念のため確認することをおすすめします。
セメント瓦は塗装せずに放置すると、雨水など水分が染み込み劣化が進んでしまいます。塗装は時間の経過とともに剥げてくるので、10年を目安に塗り替えを行わなければなりません。
色あせた箇所からは苔も生えやすく、防水性が低下するので、劣化しはじめと感じた段階で早めに対処する必要があります。
瓦屋根は他の屋根材と比較して寿命が非常に長いです。
定番であるトタンやストレート屋根の耐用年数は20~30年なのに対し、瓦屋根は50~60年といわれています。
繰り返しにはなりますが、粘土瓦の耐用年数にいたっては50~100年です。
ただ、耐久性が高く長持ちしやすい瓦屋根でも、メンテナンスが全く必要ないというわけではありません。
一般的には、必要に応じて以下のメンテナンスを行うことが推奨されています。
耐用年数はあくまでも目安です。
周りの環境や管理方法などによっても前後するので、可能であれば業者に依頼して定期的な点検やメンテナンスを実施することをおすすめします。
今回は、瓦屋根について種類や種類ごとのメリット・デメリットを中心に解説していきました。
この他にも屋根や壁など、自宅にまつわる知っておきたい知識はまだまだあります。
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